この記事はFMC Advent Calendar 2019 1日目の記事です。2日目の記事は佐村健人さんの CFOPで解く人生二度目のFMC : さむぶろぐ です。
FMCは好きなので、この Advent Calender には意気揚々と初日に参加登録してみたものの、実際にお題(1)を解いてみたところ自分としては不本意な結果となってしまいました。とはいえこの思考過程がどなたかの何かの参考になれば幸いです。
注意として、以下に記載する回転記号は基本的に色固定となります。つまり U=白、D=黄、F=緑、B=青、L=橙、R=赤 の(センターパーツがある)面を示しています。
手順についてはなるべく alg.cubing.net へのリンクを張っています。キューブが手元になくても状態や動きを確認できるかと思います。
また、FMC特有の技術に関しては文中内で WRCCさんのサイト 等へのリンクを設けていますので、併せてご参照頂ければと思います。
scramble:
(1) R' U' F L D B' R2 D2 U2 R2 F L2 F' D2 F' L' R' U B' L2 B L D2 R' U' F
自分はまだ EO から解くようなことはできないので、ブロックビルディングで 2x2x2 ブロック作りを目指します。このスクランブルだとBR側に白赤緑の c/e ペア(1x1x2ブロック)があり、F側に緑センターとくっついた白緑エッジがあるので、これを生かして 1x2x2 ブロックができそうだなと考えました。
最初の一手を B'
とすると、赤白のエッジも赤センターとくっついていい感じになりそうに見えたので、そこから以下のように 1x1x2 ブロックを作る手を見つけました。
B' D F L' //1x1x2
そこからさらに赤白エッジを白センターにもくっつけて、計6手で白緑赤の 2x2x2 ブロックを作ることができました。
B' D F L' //1x2x2
R' F2 //2x2x2
ブロックビルディングをする上では 2x2x2, 2x2x3, F2L-1 の各ステップで5手以内を目指したいので6手はやや不満ではあります。しかし inverse scramble も含めて検討したものの、この時(制限時間60分内での思考)では他の 2x2x2 ブロックを作る手が見つからなかったので、ひとまずこの手を採用としました。
B' D F L' R' F2 //2x2x2 (6)
さて 2x2x2 まではできたものの、ここから 2x2x3 ブロックに拡張するのは少々難しいと感じました。
できれば 2x2x2 ができたところで、他に 1x1x2 ブロックができていると有難いのですがそれも無し。こういう場合はまず 2x2x2 ブロックを崩さない面(今回だと L, D, B)を1手ずつ総当たりで探してみるのですが、コーナーとエッジが繋がる手はありませんでした。
一見惜しいのが、D面側に赤黄エッジ・青黄エッジが黄センターとL字型に繋がっているところ。あとはここに赤青黄コーナー(図では右上にあります)を入れて 1x2x2 ブロックにすれば、疑似 2x2x3 ブロックに持ち込めそうです。
ただしこれを利用して疑似 2x2x3 ブロックを作ろうとすると、
U B' R B R' U' //another 1x2x2
D' //pseudo 2x2x3, premove D
と7手、premove を含めると8手かかる手順しか見つけられず、これは手数がかかり過ぎると感じました。
他にいい手も見つからなかったので、NISS を使って inverse 方向から探索してみることにします。
//switch to inverse
F2 R L F' D' B //(2x2x2)'
F' U R D2 L' B' L2 B U' R L F D2 F L2 F' R2 U2 D2 R2 B D' L' F' U R //inverse scramble
ちなみに、inverse scramble をあらかじめメモ書きする方もいるかとは思いますが、自分は noramal scramble を見て脳内変換して inverse scramble を回すようにしています。NISS を使う場合はそれまでに解いた手順もその場で逆変換する必要があるので。
さて inverse 方向を見てみると、先ほど検討したL字のブロックとコーナーの位置関係が少々変化していました。ここからであれば inverse sexy move で
U B U' B' //another 1x2x2
と、2x2x2 を崩さずに 1x2x2 ブロックを作り、
D' //pseudo 1x2x2, premove D
で、疑似 2x2x3 ブロックができました。これでも premove を含めると6手となってしまいますが、他にいい手も見つけられず、この手を採用としました。
ここまでの手順を FMC におけるコメント書きにすると以下のようになります。()内は inverse 方向の手順であることを示します。
B' D F L' R' F2 //2x2x2 (6)
(U B U' B' D') D' //2x2x3 (6/12)
premove は1手のNISSとみなせるので、inverse 方向で premove を使う場合は normal 方向に1手追加することになります。
次は F2L-1 の形を目指します。まずはこれまでの流れから inverse 方向で
//to 2x2x3 (inverse)
D //(premove)'
F2 R L F' D' B //(2x2x2)'
F' U R D2 L' B' L2 B U' R L F D2 F L2 F' R2 U2 D2 R2 B D' L' F' U R //inverse scramble
U B U' B' D' //2x2x3
という形から F2L-1 への手順を検討しますが、いまいち短手数で辿りつける手が見えなかったので、さらに normal 方向へ NISS してみます。
//to 2x2x3 (normal)
D B U B' U' //(2x2x3)'
R' U' F L D B' R2 D2 U2 R2 F L2 F' D2 F' L' R' U B' L2 B L D2 R' U' F //normal scramble
B' D F L' R' F2 D' //2x2x2 + premove
ここで B
とすると、赤クロスの F2L-2 の形になります。さらに青白エッジと赤青白コーナーが目に留まったので、一旦 B
する前に L2
しておくと、いわゆるT型のF2Lの位置関係にすることができます。
L2 B //F2L-2
L2 U' L' U //F2L-1
ということで、ここでも6手かかってしまいましたが、F2L-1 の形に持ち込めました。
B' D F L' R' F2 //2x2x2 (6)
(U B U' B' D') D' //2x2x3 (6/12)
L2 B L2 U' L' U //F2L-1 (6/18)
なかなかいい手が見つからない中、ここまでで30分くらい経過しているため、インサート探索に必要な時間を考えると焦りがでてきています。
ここからエッジを揃えてコーナーを数個残した状態を目指します。理想的には、
という手法で行きたいところなのですが、焦りもありそこまでの手が見えなかったので、
という手法を取ることにしました。(このあたりの詳しい説明はWRCCの解説をご参照下さい)
//to F2L-1 (normal)
D B U B' U' //(2x2x3)'
R' U' F L D B' R2 D2 U2 R2 F L2 F' D2 F' L' R' U B' L2 B L D2 R' U' F //normal scramble
B' D F L' R' F2 D' //2x2x2 + premove
L2 B L2 U' L' U //F2L-1
という状態から検討するわけですが、L面を見るとエッジが反転しているものが多く、あまりいい状態ではありません。なので
D' B D B' //F2L#4 edge
と、sledgehammer のようにして、青黄エッジを入れつつL面のエッジを2つ反転させました。
L面(のエッジ)を見るとLの形になっているので、ここは最も短い OLL 44 (F U R U' R' F'
)、またはその鏡手順を使いたいのですが、エッジの位置関係からこれは使えませんでした。ここでは OLL 6 (Rw U2 R' U' R U' Rw'
) か OLL 7 (Rw U R' U R U2 Rw'
)、またはそれらの鏡手順が必要になります。
ちなみにOLL手順でエッジの位置がどのように変わるかについては、以前自分がまとめたものがありますので、よろしければご参照ください。
ここではまずL面を上、U面を正面として OLL 6 の手順を適用してみました。(2層回しは1層回しの手順に置き換えています)
F U2 B' U' B U' F' L' //OLL 6 + adjust L face
5コーナーが残った形にはなったのですが、2つのコーナーが正しい位置で捻った状態(2CO+3CP)になっており、これを解決するとなるとインサートが3回必要になってきます。
なので別手段として、同じ向きから OLL 7 の鏡手順(Lw' U' L U' L' U2 Lw
)を適用してみます。
B' U' F U' F' U2 B L' //OLL 7(mirror) + adjust L face
この場合では 1CO+3CP のラスト4コーナーが残った形(L4C)となりました。実のところL4Cを解決するのはL5C(5CP)の場合より難しいと思っているのですが、たまたま F2L#4 edge の最後の B'
と1手キャンセル(B' B' = B2
)できることもあり、この手を採用することにしました。
B' D F L' R' F2 //2x2x2 (6)
(U B U' B' D') D' //2x2x3 (6/12)
L2 B L2 U' L' U //F2L-1 (6/18)
D' B D B' //F2L#4 edge (4/22)
B' U' F U' F' U2 B L' //1CO+3CP (8-1/29)
ここまでで29手。2回インサートをしてキャンセルがないとなると+16手になるので、これを sub40 (40手未満) の解にするのはかなり厳しそうです。
実際に解いていた時は正確な手数まではカウントしていないのですが、ぱっと見であまりいい結果にはならなそうだと悲観的な感情に支配されておりました。しかしなんとか解を出すところまでは辿りつきたいところ。
L4Cの形まで辿り着きましたが、上記の解の手順では normal 方向、inverse 方向の手順が混ざった状態ですので、これを一旦 normal scramble からの解の形に書き直します。書き直す際の手順としては、
ということになります。今回の場合だと以下のようになりました。
//skeleton:
B' D F L' R' F2
D'
L2 B L2 U' L' U
D' B D B2
U' F U' F' U2 B L' //normal
D B U B' U' //(inverse)'
実際に回してみると確かに4つのコーナーを残して揃った状態になっていることが分かるかと思います。
これまでの過程でメモ書きのミスなどをしていると、この skeleton への変換でミスが表面化するので、このステップは割と重要だと考えています。実際に解いていた時にも1箇所 '
の抜けがあり、訂正するのに少々時間がかかりました…。
これでようやく、残ったコーナーを解決するインサート手順を加えれば解を出せるところまで辿り着いたことになります。
ここからは残ったコーナーにステッカーを貼って、解の中でコーナーを解決する手順を探っていくわけですが、今回のような 1CO+3CP の場合、自分は以下のようにステッカーを貼っています。
実際に貼ったところはこのような感じです。
まず出発点として1つのコーナーに1を貼り、そのコーナーが本来入る場所に2のステッカーを貼り…、という風にしていきます。1CO+3CP の場合、3CP はねじれたループになるため、3が入るところは1のステッカーとは別の面になり、そこに4を貼ります。ステッカーを貼る面・向きも重要です。
捻って入っている1COのパーツについては、とりあえずCOであることが分かればよいです。
そしてインサートの探し方としては以下のようになります。
時間もなくなってきているので、まずはステッカーを貼ったところから逆に手順を回して1つ目のインサートを探します。2回インサートが必要な場合は少なくとも2手のキャンセルがほしいので、2手ごとに確認していきます。(cf. WRCC解説)
ただこの時はなかなか2手以上キャンセルする手順を見つけられず、以下の *
まで辿ったところでようやく1つ見つかりました。
//skeleton
B' D F L' R' F2 D'
L2 B L2 U' * L' U
D' B D B2 U' F U' F' U2 B L'
D B U B' U'
* = B L' F' L B' L' F L
実際にステッカーを貼っている場合の位置関係は以下のようになってます。
ここで B L' F' L B' L' F L
とすると 3→4→6 という3点交換が行われるのですが、この末尾の L
が skeleton での次の手順 L'
と相殺され、2手キャンセルとなります。
これで残りの手順を回すと、3(白青橙)のコーナーが解決され、3点が残る状態となりました。
この残った3点に改めて1~3のステッカーを貼り直し、またインサートを探索していきます。ただこの時は2手以上のキャンセルを見つけられず、以下の **
の場所での1手キャンセルで妥協する結果となりました。
//skeleton
B' D F L' R' F2 D'
L2 B L2 U' * L' U
D' B D B2 U' F U' F' U2 B ** L'
D B U B' U'
* = B L' F' L B' L' F L
** = U R' U' L U R U' L'
これでインサート手順を加えてキャンセルを解決し、以下の42手の解を出すことができました。
scramble:
R' U' F L D B' R2 D2 U2 R2 F L2 F' D2 F' L' R' U B' L2 B L D2 R' U' F
B' D F L' R' F2 //2x2x2 (6)
(U B U' B' D') D' //2x2x3 (6/12)
L2 B L2 U' L' U //F2L-1 (6/18)
D' B D B' //F2L#4 edge (4/22)
B' U' F U' F' U2 B L' //1CO+3CP (8-1/29)
skeleton:
B' D F L' R' F2 D'
L2 B L2 U' * L' U
D' B D B2 U' F U' F' U2 B ** L'
D B U B' U'
* = B L' F' L B' L' F L //(8-2/35)
** = U R' U' L U R U' L' //(8-1/42)
solution:
B' D F L' R' F2 D'
L2 B L2 U' B L' F' L B' L' F U
D' B D B2 U' F U' F' U2 B U R' U' L U R U' L2
D B U B' U'
(42 moves)
以上のように自分では合計3手キャンセルのインサートしか見つけられなかったのですが、後に Insertion Finder で確認してみると、実は計9手のキャンセルがあったようです。1つめのインサートで6手のキャンセルがあり、ここは探索で通り過ぎていたところなので、ぜひとも見つけておくべきでした。
なお6キャンセルがある箇所のステッカーの位置関係は、以下の通りでした。
1→2→6 : U B D B' U' B D' B'
ここでは U
で 2 と 6 がインターチェンジとなっています。おそらく解いていた時の探索では 1と2、2と3、3と4 がインターチェンジとなるコミュテータのみを注目しており、このように 6 と他のパーツがインターチェンジとなるものを見ていなかったのが見落としの原因だったと思います。
6 のステッカーはそれまでの探索で貼る向きを変えていた可能性もあり、そこも見落としの要因の一つであったでしょう。このように CO があるインサートは自由度が高いのですが、その分探索が難しくなってきます。とはいえこの見落としは今後注意すべき点であることを認識できました。
あと、2x2x2 ブロックの作成についてですが、今回のように白赤緑の 1x1x2 と白緑エッジを利用する場合でも、他に以下の手順があるなあと後日気付きました。
B F U' L U2 F2 //2x2x2
F2 R' B' U R' F //2x2x2
後者の場合では BD 側に橙青黄の 1x1x2 のブロックができており、かなり有利そうです。自分では skeleton までの手順で以下のものを見つけました。
F2 R' B' U R' F //2x2x2 (6)
(D B L B2) B //2x2x3 (5/11)
D B D B' //F2L-1 (4/15)
L F L F'
F' D F D' L2
D F' D' F L //L3C (13/28)
skeleton:
F2 R' B' U R' F
B
D B D B'
L F L F'
F' D F D' L2
D F' D' F L
B2 L' B' D'
本番でもこのくらいの手順を見つけたいところであります。
実際解いている時、いかに自分がうっかりしていたかということを再認識させられました。FMC は頭がすっきりした状態で臨みたいものです。
記事は以上となります。長々となってしまい申し訳ありません。自分としては不本意な結果でしたが、例えば FMC の手法を学び始めた方に、解を出すまでの流れについて参考になればと思い、なるべく詳しく書いてみました。Advent Calender の後日の方々の思考過程もぜひご参照下さい。
明日は佐村健人さんの記事です。(誕生日おめでとうございます!)