RYU's HOME P@GE - Weblogのリンクテキストの記事で、「同じ疑問を以前 北村さんに呈したことがありますが
」と言及されていましたが、「以前」の指すと思われる時間がないという言いわけに対しては、自分もlink textを選択するという記事で言及していました。が、それはそれとしてリンクテキストの記事に言及してみたいと思います。
はじめに述べておくと、リンクテキストのために「ここ」という言葉を使わないように原稿を書き換える
必要は、自分もないと考えています。それはlink textを選択するで以下のように述べたとおり。
とは言え、まずリンク文字列を考え、それに合わせた文章を書くというやり方は、自分も本末転倒だと思います。そこまでせずとも、まず読み手に伝えたい文章があり、その文章と他のリソースをリンクによって関連付けたいのであれば、リンク文字列に適した言葉は既に文章の中にあるものと考えます。わざわざ「ここ」のような言葉を持ち出さなくとも。
つまり、元の文章中に「ここ」のような指示代名詞があるのなら、それが指すところの言葉(より具体的な名詞・名詞句など)が別に文章中に存在しているだろうから、そういう言葉をリンクテキストとして選べばいいのでは、という考えです。
リンクテキストの記事では「ここ」の入る文章として以下の例を挙げています。
四条河原町から八坂神社へ。 ここから 10 分ほどで東大谷に至る。
しかし自分はこの例を見て、まず「ここ」の現れ方が唐突なのではという印象を持ちました。また「ここ」が指すのが何なのかについてもすぐには判断できませんでした。「ここ」は「八坂神社」を指すということなので、それを考慮するなら、自分だったら以下のように書くだろうと想像します。
つまり、時間の経過(「まず」「さらに」)や動作(「進みます」)についての情報を提示しておかないと、いきなり指示代名詞を用いても読み手に伝わらないのではないかと思うのです。また、場所の移動について述べているのに、その途中の地点について、話し手に近い場所であることを示す「ここ」を用いるのにも抵抗がありました。
それはともかくとして、三宅さんはこの文例で「ここ」の語をリンクテキストにすることについて、以下のように述べています。
しかし、八坂神社を指すことを明確にするために、「ここ」を A で囲んで「八坂神社のリソース」(地図情報など)と関連付けることは許される。
これはつまり、「元の文章の意味が不明確な箇所を、リンクによって補う」ということなのでしょうか。仮にそのようなマークアップをしたとしても、効果については疑問を感じます。なぜなら、「ここ」が「八坂神社」を指すものと確定するには、両方の言葉をアンカーとしたリンクの指すURIを比較するなり、或いはリンク先のリソースを取得して確認するなりする必要があるからです。「まずページを開いた時に例文を読んだ時」の印象は、「ここ」の語にリンクがあっても無くてもあまり変わらないように思います。
元の自然言語による文章が分かりにくいものなのであれば、マークアップするかしないか以前の話として、まず分かり易い文章になるよう改善することを検討した方がよいのではないでしょうか。逆に、リンクが無いと意味が不明確になる文章なのであれば、「ここをクリック」のような文と大して変わりない、とも言える気がします。
仮に、文章の改変ができない事情があり、かつ「ここ」の意味を明確にしたいということであれば、a要素を使わなくとも、以下のようなマークアップで実現できるかと思います。
<em title="八坂神社">ここ</em>から 10 分ほどで東大谷に至る。
これなら、わざわざ他のリソースを取得せずとも、ブラウザのツールチップ機能だったり適切なスタイルシートを用いたりすることで、「ここ」が何を指すのかを示すことが可能です。
その上で、八坂神社についての情報を提示したいのであれば、その前の文に書いてある「八坂神社」をリンクテキストとしてリンクを設ければよいのではないでしょうか。
さらに、三宅さんは例に挙げた文について、以下のようなマークアップの例を挙げています。
四条河原町から<a href="http://web.kyoto-inet.or.jp/org/yasaka/" title="YasakaShrine(Opening)">八坂神社</a>へ。 <a href="http://www.mapion.co.jp/c/f?uc=1&grp=Air&..." title="ベーシック地図:Mapion(マピオン) > 「京都府京都市東山区祇園町北側」付近地図">ここ</a>から 10 分ほどで東大谷に至る。
八坂神社を指すことを明確にするため
と言いつつ、「八坂神社」のアンカーと「ここ」のアンカーの指すものが異なっている、というところに疑問を感じました。これだと「ここ」の意味を確定するには、やはり双方のリンク先のリソースを取得して比較する、という負担を読み手に強いることになります。
またリンク先の選択についても、なぜ「八坂神社」という固有名詞だと施設の説明を記したサイトで、「ここ」という指示代名詞だと場所を示す地図のページなのか、という疑問を感じました。
述べるのが後回しになりましたが、三宅さんがリンクテキストの記事において、
「仕様上、違反にはなりません
」
「許される
」
「HTML の理念としても正当
」
という言い方をされているのに違和感を持ちました。自分としては「ここ」リンクについては仕様とか理念とかの問題ではなく、「どのようにすればHTMLを活用して情報を分かり易く伝えられるか」という観点で述べていたつもりだったので。いわゆるユーザビリティの問題であり、許されるとか違反しないとかではなく、「こうしたら皆でもっと便利に利用できるのでは」という提案だと考えています。そしてそれは以前の個別記事へのリンクを考える、link textを選択するの記事でもそうだったつもりです。
三宅さんが「ここ」リンクについて、HTMLの仕様上許されているかどうかのみを気にしているのであれば、別に自分の述べたことなど気にする必要はないかと思います。