数学に関する本を読むと、「十進数」のことを「10進数」と書いてあることがあるが、この「10進数」という表記はやや不正確ではないだろうか。
例えば二進法で「二」を書き表すと「10」になる。
また、三進法で「三」を書き表すと「10」になる。
……
以下同様に、全ての整数「n」に対して、n進法で「n」を書き表すと、「10」となる。これはつまり、極端な話、全てのn進数が「10進数」と表記され得ると言うことだ。従って「10進法」を「十進法」の意味で表記するのは正確ではない。
勿論日常生活に於て、数の表記は十進法によるという前提はある。しかし数学で「n進法」を論ずると言うことは、その前提を一旦無しにして考えるということだ。だからある特定の数nに対して「n進数」と表記するならば、位取りに依存しない表記を行う数詞(日本語であれば漢数字が適当だろう)を使うことが、正確な表記のためには求められるべきではなかろうか。広く一般に向けた数学入門書のような本ならともかく、専門的に数学を論ずる本で「10進数」という表記は避けるべきである。
英語だと二進数は"binary"、十進数は"decimal"という風になるから、上で述べたような混乱はないと思われる。あれ? そう言えば英語で「n進数」は何て言うんだろうか。今度調べとこう。
と書きながらそのままになっていたのですが、タデオ博士さんより「n進数」は"base n"になるとの情報を頂きました。十進数も"decimal"だけでなく"base 10"とも書くそうです。
(2000年10月27日)
北村曉 kits@akatsukinishisu.net