イフの世界

「太夫」は「たゆう」と読まれます。何故そう読むかは知らないけどそういうものなのだな、と認識していましたが、先日辞書の「太夫」の項を読み、旧かな表記の欄に「たいふ」とあったのを見て、はっと気づきました。

「成る程! 元は字の通り『たい』+『ふ』で『たいふ』と書いていたのが、『いふ』を取り出してその部分が音便で『ゆう』という発音になったからか!」と。

これは自分にとってはかなり衝撃的な事実でした。 だってコレを応用すると、掛布さんはカキョーさんと呼ばれることになるのですよ。将棋の二歩はニューとなり、漫画情報誌「ぱふ」はポーとなってしまいます。

「Fを発音しなさい」「エフ!」などいう文が書いてあっても、朗読するとしたらどうしても「ヨー!」と発音せざるを得ないハメに。

もし旧仮名遣いが残っていたら、このような言語世界が展開していたのかも知れず、それはそれで愉快かもしれない。などと空想を巡らしました。

(1999年8月16日)

北村曉 kits@akatsukinishisu.net