前々から書いておこうと思っていたことを。
大漢和辭典の「字訓索引」の中から長い訓を持つ漢字を長訓読み選手権で紹介しているわけですが、これらの「字訓」が本当に訓読みとして妥当か、というのは議論の余地がありそうです。
例えばについて。この字を大漢和辭典でひくと、次のように説明されています。
[一][二](一)骨と皮とがはなれる音。然を見よ。〔集韻〕、然、皮骨相離聲。
また、「然」という熟語については次のように説明されています。
- 【然】2 ケキゼン クワクゼン
- 皮と骨とが離れる時に發する音。ばりばり。べりべり。
「ほねとかわとがはなれるおと」というのは確かにの意味ではありますが、どちらかというと「字の説明」というニュアンスであり、その字の意味の本質は「ばりばりという擬声語」ということになります。なので訓読みとしてはどちらかというとばりばりとかべりべりの方が相応しいようにも思えます。
一方、の説明はというと、
祭りの供え物のお下り。〔集韻〕、祭福也。
となっています。「祭福」という熟語は大漢和辭典の「祭」の項にも載っていなかったので、詳細な意味について判断しにくいところですが、もともと「
そう考えて行くと、
歩き方が正しくない。〔字彙補〕、行不正。
このように、大漢和辭典の字訓索引は、通常思い浮かべるような「訓読み」とは多少離れた、字の説明的なものまで載せている、ということを心に留めて頂ければ幸いです。またそれはそれとして、一つの字にこれだけ複雑な意味が込められている、というところを楽しんで頂ければと思います。
以下の文章もご参照下さい(外部リンク)。
(2004年3月18日)
北村曉 kits@akatsukinishisu.net