「おういちざ」の字に関して、和製漢字の辞典の大原さんから頂いた情報です。(掲示板の記事より抜粋)
この字の典拠は、『廓[笠−立+愚]費字盡』(くるわのばかむらむだじづくし)という江戸期の戯作者のひとり戀川春町が作った自作漢字による『小野篁哥字盡』(おののたかむらうたじづくし)のパロディ本です。
『異体字研究資料集成一期九巻』の三三四頁にありますので、大きい図書館なら影印を見ることができます。同書の四二四頁に翻刻もありますが、字形が正確ではありません。
正確ではありませんが、『和製漢字の辞典』の記号で表せる限り、翻刻をしてみます。『今昔文字鏡』の翻刻があまり正確でないことのみ読みとっていただければ結構です。
[{(敵−攵+欠)△客△(敵−攵+欠)}*(吐+ヽ)*{(敵−攵+欠)△客△客}]
この字形からわかるように、『今昔文字鏡』で最も小さく表現されている[吐+ヽ]が実際は最も大きいのです。
読みは「大いちざ」と付けられており、解説の歌は「おそろいのなかではくのがおういちざ」とあります。現代なら「大いちざ」は「おおいちざ」と読みますが、「おういちざ」となっています。(1999年2月14日)
後日、横浜市中央図書館へ『異体字研究資料集成一期九巻』を見に行き、「おおいちざ」の字形をコピーして来ました(下図)。なるほど文字鏡フォントとはかなり違っています。
おそろいのなかではくのがおういちざ
なお、『廓費字盡』の読み方は「さとのばかむらむだじづくし」が正しいようです。
(2000年5月14日)
北村曉 kits@akatsukinishisu.net