オオシモフリエダシャクの思い出

僕が高校時代、いかに漢字にはまっていたか、というエピソードを書いてみます。

生物の試験を受けていたときに、答えが「オオシモフリエダシャク」(蛾の一種)となるべき問題がありました。

当時、僕は生物の和名が教科書等でカタカナ書きしてあることに疑問を感じていました。日本語だから漢字で書いてもいいじゃないか、と。それで僕は答案にオオシモフリエダシャクを漢字で書くことにしました。

「『オオ』は『大』、『シモフリ』は『霜降』以外に 無いだろう。『エダ』は『枝』だろうし、『シャク』は……『尺取虫』が成虫になって、『尺取蛾』になるわけで、『シャク』はその略だろうから『尺』でいいや」

そんな風な思考の末、解答欄には「大霜降枝尺」の文字が書かれました。

後日、テストが返ってくると、「オオシモフリエダシャク」という答えは正解だったのですが、僕が書いた「大霜降枝尺」はバツになってました。

当然先生に抗議しました。答え自体はあっているし、「オオシモフリエダシャク」を漢字で書いたら「大霜降枝尺」以外に有り得ない。それなのにバツにするのはおかしいではないか、と。

しかし先生は聞き入れてくれませんでした。生物の名前は原則としてカタカナで書くべきだ。また、例えば「カマキリ」という答えを「蟷螂」と書くのだったらマルにするが、「大霜降枝尺」は一般的では無いから駄目だ、ということでした。

しつこく食い下がったものの、結局「大霜降枝尺」は正解にはなりませんでした。その時の悔しさは高校卒業後もしばらくあとを引いていたものです。

このことより僕は「郷に行っては郷に従え」ということを身をもって学んだような気がします。生物学の原則として、「生物の和名はカタカナで書く」という習慣がある以上、生物学のテストでもやはりカタカナで書くべきだったのでしょう。


付記:生物のテストから二年後、まったく懲りてない北村は地学のテストで、教科書ではカタカナ書きだった岩石の名前を、またしても「花崗岩」「玄武岩」などと答案に書いておりました。幸いその時は無事にマルを貰っていたようです。

(1998年2月6日)

北村曉 kits@akatsukinishisu.net