もしも、鏡の中に入ることが出来たら……というはなし。
ふふっ。一度これをやってみたかったんだ。
わたしは同じ大きさの鏡を二枚、平行に置いた。そして、
それっ!
という掛け声とともに、鏡の中へ跳び込んだ。
わあ、合わせ鏡の中って、本当にずっと奥まで続いているんだ。よーし、どこまで続いているのか確かめてみようっと。
わたしは奥へ奥へと走ってゆく。
ふう。疲れた。何処まで行っても同んなじ景色だし、もう飽きた。
そろそろ帰ろうっと。
あれ! そう言えばもとの場所って何処だろう。
幾ら戻っても同じ場所に見えるし……
ここまで来た時間を考えて……
……
この辺かな? うん、多分そうだよね。
その時、鏡の片方が倒れた。
バタン!
帰る場所を間違えたわたしは、鏡像とともに消えてしまった。
それでもわたしは、ここにいるよ。
もとは鏡像だったわたしがね。■