さいかい

 宇宙探検家、ミュンヒハウゼン氏の話は続く――

 &$!*星系からの帰り道。
 計器が救難信号を捉えた事を知らせ、私はすぐに船を発信源へと向かわせた。
 程なく、人ひとりが入る位の小さな救命艇を発見した。
 艇を回収して扉を開けてみると、中には下半身と左腕を失った人間型生物が。慌てて手当てをしようとする私を「彼女」は押し留めた。
「傷は塞がっています。それより、暫くの間休む場所を貸して頂けますか」
 私は心配に思いながらも彼女に自室を貸し、操縦室で待った。

 数時間後。操縦室に出てきた彼女は、なんと五体を完全に取り戻していた!
 但し、最初に想像した全身像よりかなり小さくはなっていたが。

「もしかして……貴方はソージー星の方ですか?」
「そうです」
 私は或る特異な生物が棲む星の事を思い出していた。地球生物は体に傷を受けた際、細胞分裂によって修復を行うが、体の大きな部分を失った場合には対応できない事が多い。しかしソージー星の生物は体の一部を失った場合、今ある細胞を再分化・再構成させる事により、体を元の形に戻す事ができるのだ。その代り体の全体的な大きさは前より小さくなるのだが。

 話を聞くと、彼女の乗っていた船が隕石との衝突事故に遭い、そのせいで彼女は腕と下半身を失ったそうだ。何とか自力で救命艇に乗って脱出したものの、その後船がどうなったかは知らないらしい。
 私はこの宙域付近での事故の情報を調べてみた。
「ほう。ジェファソン号の事故で救出された乗客は、#星で保護されているそうですよ」
「本当ですか。私はそこへ行きたいです」彼女の共通語はたどたどしい。
「では直ちに#星へ向かいましょう」
「お忙しいところすみませんが」
「気遣いは無用です。どうせ気ままな独り旅だ」

 #星の宙港に着いた途端、彼女は船を飛び出した。慌てて私も彼女を追う。
 すると宙港の待合室で叫び声が上がった。
「――!」
 彼女はその声を発した人へと駆け寄っていた。
 その人の姿は「彼女」に瓜二つであった。
 否、その人も又「彼女」であった。
 何故なら互いに抱き合った二人は、みるみるうちに融け合い、大きな一体となったからだ。

「有難うございます。御蔭で私の半身と再び会えました」
 どう致しまして、と私は控え目に答えたのだった。

*

 そう言えば、彼女は「これから母星へ帰るつもりです」と言っていた。
 もしかすると、それは言葉通り、母なる星であるのかもしれない――■

北村曉 kits@akatsukinishisu.net