「短編」第16期を読む

短編第16期は15期に比べるとややテンション低めなような。それはともかくとして近頃投票も減り気味なのが気になるところ。よければ読んで投票していって頂けると管理人は大変喜びます。

竹井さんの傘」は、川島さんの持ち味が生かされた作品。友達以上恋人未満どころか友達未満であるようなのに、何だかハートウォーミングな気持ちにさせられます。

a.k.a.ハチミツボーイさん抱擁」もまた、この人ならではの作品であり、楽しみました。毎回新しい作品を読む側にとっては、ある程度安定した作風を持っている人の作品があるとやはり安心できるもの。「心を折った」という言葉がすごく活きていると思いました。

Nishinoさんは「登場人物二人の会話」がひとつの典型になってきたようで、前期作品ではそれに漢字ネタが相俟ってわたくしの心を捉えたのでありましたが、今期の「電子の蝶」も、SF的想像力を刺激する好作品。

戦場ガ原さん霧の中」は、前期よりさらに地味と言うか渋いところをついてきたような。淡々とした文章もさることながら、最後の松田の爺さんのにやつきは政市の葛藤を見透かしているようにも見えて、面白くありました。

今期一番のとんがった作品は瑕瑾さんカアル」ではないでしょうか。読み終わって思わず「そこから持ってくるんかい!」とツッコんでしまうこと請け合いです(何がそこからなのかは、まあご一読を)。や、それだけでなく内容にも思わず唸らされましたですよ。

とんがり具合では曠野さん小人」もいい勝負。「小説」というよりは単に「文章」と呼んだ方がよさそうな、少なくとも「物語」ではなさそうな感じ。巡りめぐってもとに戻ってくるような感覚には惹かれました。

今期気になったのはこんなところ。

(2003年12月8日)

北村曉 kits@akatsukinishisu.net