「こけらおとし」という言葉がある。劇場などを新築したときの最初の興行のことだが、これは漢字で書くと、「柿落とし」となり、一見すると「かきおとし」にみえる。しかし、こけらの「柿」という字と、かきの「柿」という字は、もともと全く違う漢字なのだ。
かきとよむ は、音をシといい、部首索引で言うと木部五画という分類になる。書き方は「木」を書いて「亠」を書き、その下に「巾」。
これに対し、こけらとよむ は、音をハイといい、木部四画に分類される。これは元々は「」という字で、旁(つくり)の真ん中の棒は上から下まで突き抜けているのだ(だから画数が一つ少ない)。
とまあ、このような細かな違いがあるのだが、よく見ないと区別がつかない。漢和辞典を見ると二つの字体は区別してあるが、JIS漢字では既に「柿」という字しか存在しない。やがてはこのような区別は、歴史の中に埋もれていくのだろう……。
(1997年11月14日)
しかし! こけらとかきの字にはまだ僕の知らない事実が存在したのだった! 続篇も読んでね。
北村曉 kits@akatsukinishisu.net