こけらとかきの違い・続篇

こけらとかきの違いを書いた後、1997年12月14日に、渡口さんという方からメールを頂いた。

柿とこけらが別字というのが私も常識だと思っていたのですが、JIS X0208−1997(JIS漢字規格)の附属書7「区点位置詳説」に柿とこけら関係の記述があります(pp272-274)。

これによると、過去の規範的な文献(字書等)を9種類ほど引用し、現代の字書等が別字とする根拠は明確ではないとのことです。

すなわち、同字とするもの、別字とするも現在の区分と逆とするもの、全く別の字体と対比されるものなど、なかなか説得的です。是非読んでください。

後日規格書のコピーも頂いた。それによると、文字・字体に付いての規範的な文献での、かきとこけらの区別は以下の様になっている。[木市]が木部五画、[木(肺-月)]が木部四画、他は別字体である。

文献かきこけら
五経文字[木(市+ノ)][木(肺-月)]
龍龕手鑑[木市][木(市+ノ)]
康煕字典[木(十+H)][木市]
色葉字類抄[木市][木(肺-月)]
玄応一切経音義両方とも[木市]
宣賢卿字書・宣賢加点本両方とも[木市]
新撰字鏡[木市][木(肺-月)]を同字とする

このように、かき=[木市]、こけら=[木(肺-月)]という字体区別は、必ずしも明確ではないとして、JIS規格では「柿」で両方の字を包摂しているそうだ。「こけらとかきの違い」で僕が述べたことは、一面的な見解であったと言わざるを得ない。大変勉強になった。

メールと規格書のコピーを送ってくれた渡口さん、有難うございます。

(1998年1月30日)

北村曉 kits@akatsukinishisu.net