本屋から出てみると一頭の犬が入り口近くにつながれていた。手足のすらっとした非常にスタイルの良い、また白地に黒の斑模様も鮮やかなダルメシアンであり、日頃犬への関心がさほど高くない自分も思わずはっと目をひかれた。
犬の近くには、犬とは直接関係のなさそうな親子連れが立って犬を見ていた。犬見学の先客といったところか。親はしきりに犬を「可愛いねえ」とほめているのだが、子供の方はどうやら犬を怖がっている様子だった。
なるほど、考えてみると自分がその犬を恰好よいと感じたのは、今まで様々な犬を見てきて、それと比較しての結果であるのだろう。しかし子供にとっては大型犬はその大きさだけでも恐怖の対象となりうるし、鮮やかな斑模様も、そのようなものをあまり見たことのない者にとっては、異様なものとして目に映りそうではあった。
で、子供は「いやだいやだ」と言い続けているのだが、親はそんな意見に頓着することもなく、「どうして? 可愛いでしょう」などと言いつつ子供を抱いて犬に近づけようとしている。その様子を見ていると、なんだかもの哀しくなってしまったのだった。
(2001年12月29日)
北村曉 kits@akatsukinishisu.net