久し振りの新井素子の新刊。最初の数日は少しずつ読んでいたが、或る日の夜中で中盤から一気に読了。面白く読みました。(以下内容に触れます)
所謂「ストーカー」を新井素子的解釈を経て出力したら何だかちょっと違うものになった、という感じ。話が進むにつれどんどん暗い方向へ行きそうなところから、作者独特の論理展開ですごい方向転換がなされていく様が面白くありました。題名通りハッピーで終わるのもまた良かった。
といっても最後の最後はハッピーと言えるかどうか、意見の分かれるところかも知れない。むしろ恐いと思う人の方が多いのかも。でも主人公にとってはこの結末がハッピーであると思う。このような、(他の人とは違っているかもしれない)自分にとっての幸せを追求する様を見るのは、何となく好きであります。恐いなどの否定的感情は、あんまり浮かびませんでした。
地の文の書き方や、文中で注釈のための()の部分が1ページ以上の長きに渡るところなども、以前からの読者としては作者らしさ健在だなと楽しんだところでした。他の作家がこのような書き方をしてるのを読んだ場合、果たして許せるかどうか疑問ではあるのですが、これがなかったら新井素子じゃないよなあ、とも思うのでした。
(2002年10月20日)
北村曉 kits@akatsukinishisu.net